通信ネットワーク最前線(第32回)

東陶メンテナンス(株)

ウオシュレットでお馴染みのTOTOブランドのアフターメンテナンスを担う東陶メンテナンス(株)。その修理依頼や問い合わせを受け付けるコールセンターについて話を聞いた。

地域密着型のサービス体制を確立

 東陶メンテナンス(株)は、「TOTO」で親しまれている東陶機器(株)の100%出資子会社。1980年12月、(株)東陶サービスとして設立して以来、大阪、名古屋、福岡に支店を開設。1986年9月、全国的なサービス体制を整え、1987年3月、施行付き商品の修理受付窓口を開設。1988年3月、東陶メンテナンス(株)に社名を変更した。
 現在、同社では札幌、仙台、金沢、大宮、千葉、東京、横浜、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の12支店と新潟の1営業所、計13カ所に受付センターを設け、TOTOブランドのすべての製品に関する問い合わせ、および修理依頼の受け付け、カスタマー・エンジニアの派遣依頼、修理の完了報告管理を行っている。同社では、これらを主要な受付窓口とする一方で、全国各地に点在する営業所や出張所においても、小規模での受付業務を行っている。
 同社では、従来、関東・甲信越地方の受け付けを各営業所ごとに行っていたが、修理の内容を手書きで記入した後、サービス・ショップごとの振り分けと修理依頼をしていたので、社員への負担が大きく、カスタマー・エンジニアがお客様宅へ訪問するまでに時間を要していた。また、手書きの受付情報をファイリングしてメンテナンス情報を管理していたため、データの参照や集計が非常に非効率的に行われていた。そこで、東京に統合型のコールセンターを開設し、1カ所で集中して受け付けを開始。また、カスタマー・エンジニアの派遣から管理までをシステム化し、各修理店への修理依頼はシステムで自動的に処理することを可能にした。これにより、社員への負担を軽減。また、対応履歴や修理件数などのデータの参照や集計が容易に行えるようになった。
 しかし、関東・甲信越地方の受け付けを東京で集中して行うことによる弊害もあった。それは、住所が読めなかったり、土地勘がないがゆえにお客様との会話がスムーズにいかない、スピーディな対応ができないなどである。そこで、同社では受付体制の見直しを図り、前述の全国12支店1営業所、計13カ所の受付センターを中心とした受付体制を整え、地域密着型へと転換。現在に至っている。

サービス向上と効果的な告知を目的にフリーダイヤルを導入

 全国の受付センターでは、フリーダイヤル計102回線を用いて修理依頼、および各種問い合わせの受け付けと、修理後の不満や苦情の受け付けを行っている。修理依頼については、FAXでの受け付けも併せて実施。フリーダイヤル番号は、修理依頼、および各種問い合わせの受け付けと、修理後の不満や苦情の受け付けのそれぞれに専用の番号を設定している。後者は、1998年8月から全国で一斉に受け付けを開始した。
 同社が初めてフリーダイヤルを導入したのは1988年のこと。給湯器やウォシュレットの修理受付を中心に導入した。導入の動機は二つ。ひとつ目は、TOTO製品が故障をして不便を感じているお客様に、通話料金を負担してまで修理依頼をしていただいたのでは申し訳ないという思いから。二つ目は、故障の時にはどこへ電話をかければいいのかがすぐに分かるよう、効果的な告知をするためである。
 修理依頼、各種問い合わせを受け付けるフリーダイヤル番号の告知には、製品の裏側に貼るシール、取り扱い説明書を活用。このほか、親会社であるTOTOのホームページに同社の支店一覧をリンクさせ、番号を告知している。
 修理後の不満や苦情を受け付けるフリーダイヤル番号の告知には、フリーダイヤル番号を明記したカードを活用。カスタマー・エンジニアがお客様宅へ修理にうかがった際にカードを手渡すという方法を採っている。

TOTOホームページにリンクしている東陶メンテナンス(株)の事業所一覧画面 TOTOホームページにリンクしている東陶メンテナンス(株)の事業所一覧画面

TOTOホームページにリンクしている東陶メンテナンス(株)の事業所一覧画面


カスタマー・エンジニアが修理終了後にお客様に直接手渡しているカード

カスタマー・エンジニアが修理終了後にお客様に直接手渡しているカード

役割を明確にして業務の効率化を図る

 修理依頼、各種問い合わせの受付時間は、午前8時から午後8時までで、年中無休。ただし、西日本に位置する受付センターでは、午前9時から午後8時までの受け付けとなっている。対応に当たるのは、約150名のオペレーター。このうちの約80名が社員で、残りの約70名はNTTテレマーケティング、ベルシステム24などテレマーケティング・サービス・エージェンシーから派遣されてきたオペレーターである。基本的には、派遣のオペレーターが対応に当たるが、高度な知識を必要とする問い合わせについては、バックアップとしてスタンバイしている社員が対応に当たる。
 同社では、社員研修はもちろん、派遣社員の研修にも力を入れており、週に1回は製品説明などの研修を行っている。そのため、お客様から寄せられる修理依頼、および問い合わせの約9割が派遣のオペレーターで解決できているという。
 一方、修理後の不満や苦情の受付時間帯は、平日の午前10時から午後5時までで、土・日・祝日は休業となっている。対応に当たるのは、全国の受付センターの社員。そのため、社員の人数が少なくなる午後5時以降と土・日・祝日はあえて業務を行っていない。また、お客様からの修理依頼や各種問い合わせが集中する朝も受け付けを控えている。
 受付センターでは、NECのACDを導入し、着信したコールをオペレーターに均等、かつ効率良く分配。また、これによりオペレーターの稼働状況やコール数などのリアルタイム情報を把握している。全国の受付センターに寄せられるコール数を見ると、電話による修理依頼が約100万件/年。同じく問い合わせ受付が約50万件/年。FAXでの修理依頼が約50万件/年となっている。

受付体制を強化しクイック・レスポンスを実現

 このほか同社では、修理依頼からカスタマー・エンジニアの派遣までをシステム化したり、フリーダイヤルの付加サービスを活用して出張所の電話受付業務をサポートするなど、通信技術を効果的に活用することでお客様への迅速な対応を実現している。
 まず修理は、お客様から直接依頼されるものと、販売代理店を通して依頼されるものとに分けることができる。件数の割合を見ると、前者が全体の約6割、後者が約4割となっている。オペレーターが修理依頼を受けながら、端末にお客様の氏名、住所、電話番号、故障内容を入力すると、自動FAXでお客様の最寄りのサービス・ショップにカスタマー・エンジニアの派遣依頼が送信される。修理終了後は、サービス・ショップから各支店の完了報告書の入力を専門に行う部署へFAXで完了報告書が送られ、入力される(図表1)。修理依頼の自動FAXは、毎時間、その時間内で受け付けたものがまとめて送信される仕組みになっている。
 次に、出張所の受付業務のサポートについてみると、社員がひとりでお客様からの電話に対応している出張所もあるため、話中や席を外している間に電話がかかってくると対応ができなくなる可能性がある。そこで同社では、フリーダイヤルの付加サービスのひとつである「転送サービス」を利用し、出張所で溢れたコールを管轄の支店へ転送して、各支店でこれに対応することにより出張所をサポート。お客様からの電話を取り逃すことがないよう努めているのだ。

【図表1】修理受付からカスタマー・エンジニア派遣までの流れ

通話料金の負担軽減策に「ナビダイヤル」の導入を検討

 現在同社には、3つの大きな課題があるという。
 ひとつ目は、実際にお客様宅へカスタマー・エンジニアを派遣するサービス・ショップと受付センターがオンラインになっていないため、修理完了と修理の完了報告書の入力にタイムラグがあること。これに伴い、各サービス・ショップに修理依頼が何件入っているのか、一度の訪問で修理が完了したか否かなどの状況をリアルタイムで把握できず、カスタマー・エンジニアの派遣の調整が難しいのが現状。現在、同社システム情報部において、このシステム改善に着手しているという。
 二つ目は、お客様の増加にともない年々増加している通話料金を軽減することである。1999年4月下旬からは携帯電話やPHSからのフリーダイヤル接続開始が予定されていることもあり、通話料金の負担がますます重くなると予測できる。そこで同社では、通話料金は電話をかけた側の負担となるNTTの「ナビダイヤル」の導入を検討している。「ナビダイヤル」とは、「0570」からはじまる10桁のナビダイヤル専用番号を利用してあらかじめ指定した電話番号に電話をつなぐサービス。電話をつなぐ前に、「○○秒ごとに、およそ10円の通話区間になります」というガイダンスを流し、通話料金の目安を電話をかけている人にお知らせしてから通話が開始される。「ナビダイヤル」には、コール着信時に本来の着信先の回線がすべてふさがっている場合、あらかじめ指定した他の着信先へコールを接続する「話中時迂回」、全国複数の着信先でひとつの番号を利用し、コールが発信された地域ごとにあらかじめ指定したそれぞれの着信先へ接続する「複数拠点共通番号」など、一般加入回線同様の発信者課金でありながら、フリーダイヤルの付加サービスと同様の機能を備えている。
 三つ目は、顧客サービスの充実を図るために夜間、および土・日・祝日も受付業務を行っているが、それによって社員への負担が増えていること。特に、インハウス・コールセンターを持つ場合は、社員の夜間勤務や休日出勤はやむを得ない。同社では、社員にかかる負担をどうやって軽減するかを考えているという。
 お客様への最善のアフターサービスの提供を目指す同社では、今後も、クイック・レスポンス体制と確かな技術力で、最高のお客様満足の提供を追求し続けていく意向だ。

東京都墨田区にある東京受付センターのオペレーション風景 東京都墨田区にある東京受付センターのオペレーション風景

東京都墨田区にある東京受付センターのオペレーション風景


月刊『アイ・エム・プレス』1999年5月号の記事